2016年4月3日日曜日

本・アートに関連したレビューブログ 『Book of Life』

Inlight.eduでは、より深く本やアートを読み解くことを目的とした『Book of Life』というブログで、皆様に馴染みのある純文学から、新書、漫画、評論、写真集など、様々なジャンルの本のレビューを掲載しています。


本の読み方は、人それぞれといわれますが、筆者は一人しかいません。
誤解はいくらでもできますが、筆者の表現はその作品一つだけです。


ただの感想やあらすじのレビューだけではなく、そういった少し踏み込んだ本の読み方も含め、『Book of Life』をご覧いただければと思います。

⇛ ブログのURL:http://www.bookoflife.tokyo

2015年度順天堂大学医学部入学試験 小論文「キングス・クロス駅の写真」

問題「キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい」




これは、2015年度順天堂大学医学部入学試験の小論文の問題として出題されたものです。

東洋経済ONLINEの記事でも紹介されています。

多くの受験生は、このような問題に対する対策をしていないだけではなく、”今まで解いたことのない(考えたことがない)” 問題であったということで、パニックになったかもしれません。

そして誰もがきになるのは、”合格するための解答” はどのようなものになるのか、ということになります。

問題文も「あなたの感じるところを800次以内で述べなさい」と、わざと中途半端な書き方をしています。

この問題を解くために必要な思考は、次の3つです。
1.医学部の小論文なので、医学にからめた内容であること(内容の方向性の決定)
2.絵は何を象徴しているのか(分析力と考察力)
3.1と2を踏まえて、あなたは何を思うか(個性の表現や個人の見解・意見)

800次なので、2段落か3段落構成で、上記した内容をまとめれば小論文を書くことは可能ですが、この下書き(ドラフト)を書くことができるかどうかが、最初の関門となります。

日本人はエッセイが苦手

日本人がエッセイが苦手な理由には、「そもそも何を書けば良いのか分からない」というものが多いのです。

好き嫌いと意見の違いや、批判的(クリティカル)な感想を考えるという習慣がないからです。

さらに、最近では、個人を尊重するというフレーズに煽られ、”人それぞれ” の意見の重要性が主張されることが多いですが、これは、この場で求められているものとは決定的に違うものです。

”答えがない” もしくは、"答えが一つとは限らない" ことは、明確な正解がないこととは違います。

同じものを違う方法で表現すると、違うものに見えてしまうというのは、物事の本質がつかめていないことになります。

「階段の下の方に結び付けられた赤い風船」
「階段をほぼ登りきろうとしているコートの男(大人)」
「男が振り返る気配はない」
「全体的に暗い雰囲気」
「トンネルの先は見えない」

ということが、どのような文脈でどのように解釈可能かということを論じればいいのです。

この絵を見て、ハッピーな気分になる人は、稀でしょう。
そういう人もいて一向にかまわないのですが、分析力が欠如し、求められている解答ができないとみなされるだけです。

これが、入試問題として成立する理由を考えれば、ある程度解答の方向性は絞ることが可能です。

そして、これは決して特殊な試験形態ではなく、3つの思考を考えて表現できる力があるかどうかが試されています。


この問題を対策できる指導者がいない

教育について問題となるのは、このような問題を対策するために、どれほど時間とお金と労働力を費やせるかということです。

多くの塾や学校の先生は、このようなエッセイを書く教育を受けてきてはいませんし、一見「明確な答えがでそうにないこと」よりも、「パターン化することができる少しでも点数を稼げるテクニック」を教えるほうが、費用対効果が高くなります。

そして、多くの親御さんや生徒も、点数として明確に結果が出るもののほうが、不安が解消され、安心するでしょう。

しかし、本当にそれで良いのでしょうか。

社会が本当に求めている人材は、このような考える力が備わった学生なのかもしれません。